2012年1月22日日曜日

「スコットランドが独立するならば、連合王国はウイスキー輸出を支援しない」——ウィリアム・ヘイグ外相(デイリー・メール)

WSJ一回目の記事としてはうってつけのニュースが、デイリー・メールのウェブサイトにアップされている。

'We won't back your whisky if you break away,' Hague tells Scotland
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2090020/We-wont-whisky-break-away-Hague-tells-Scotland.html#ixzz1kBnKOAwK

筆者の拙い英語力と翻訳ソフトに頼った和訳によると、この記事の要旨は下記の通り。


・ウィリアム・ヘイグ英外相は盛んとなりつつあるスコットランド独立の動きについて、「もし独立するならば世界140ヶ所に存在する英国大使館および高等弁務官事務所での、スコッチウイスキーのプロモーション活動を中止する」と非公式会議の場で語った。

・昨年のスコッチウイスキー輸出により、スコットランドは300億ポンド(3.5兆円)の収入を得た。
これは2010年と比較して20パーセントの伸びを示している。

・なお、英国外交部はスコットランドとの関係において、無償でウイスキーのプロモーション活動を行っている。

・今後、数週間のうちにキャメロン英首相とサモンド・スコットランド首相との間で独立のための国民投票に関する会談が開かれる予定だが、それがロンドンで行なわれるか、エジンバラ(スコットランドの首都)で行なわれるかは未定。

・ICM(アメリカのメディア代理店)とサンデー・テレグラフの世論調査ではイングランド有権者の43パーセントはスコットランド独立を容認し、連合王国に留まることを望む人は32パーセントしかいなかった。

・一方、メール・オン・サンデーのイングランド有権者への調査では29パーセントが独立反対、26パーセントが容認している。

・ウェールズとの関係について同様の世論調査を行なった場合と比較すると、スコットランド独立の方が、イングランドの有権者は容認していると言える。


(上記記事を引用していただくのは構いませんが、その責は負いかねます。誤訳の可能性もあるので)

シングルモルトファンという立場を離れてみれば、ヘイグ外相のコメントは「ごもっとも」としか言いようがない。
筆者が英国外相でも同じことを言うだろう。

ただ、イングランドとスコットランドが心情的に融和できたのは、ある意味でウイスキーのおかげとも言えるかもしれない。
ジョージ4世がスコットランドの氏族たちと氷解できたのは、彼がスコットランド行幸でキルトを纏ったからだと上記リンクのウィキペディアに記されている。
それはきっと事実だろう。
ただその一方で、彼がスコットランドに着いた直後に発したとされる言葉が、スコッチたちを喜ばせたという事実もある。

「余は、グレンリベットを飲みたい」

グレンリベットとは、トラディショナルなシングルモルトウイスキーとして、現在でも人気の高い銘柄だ。
しかし、ジョージ4世が生きた当時、ウイスキーは密造酒であり、王族が嗜むような酒ではなかった。
それが国のトップたる王が「飲みたい」と言ってしまったものだから、スコットランドは大喜び、一方で政府役人たちの焦った姿は、想像に難くない。
この発言が元で、酒税法が改正、1824年にグレンリベットは政府公認の蒸留所となった。

日本の東京と大阪以上にライバル——というより、軋轢関係のあるスコットランド・イングランドだが、このような微笑ましいエピソードも残っているのだ。
独立問題は両国の問題である以上、日本人の筆者が何か言うべきものではないと思うが、歴史と文化に大きな影響を与えたウイスキーが「イギリス」から消えてしまうのは、寂しい気もする。

ちなみに、デイリー・メールの記事の中で使われている写真は、ラフロイグというシングルモルト。
カンフル剤:スコットランドのウイスキーの貿易は、イギリスの大使館によって昇圧され
ラベルの上の方にある羽のマークは「プリンス・オブ・ウェールズ」を示すもので、ようするにチャールズ皇太子御用達のウイスキーだ。
もし、独立してしまったら、この辺りのことにも変化が出てくるのだろうか……

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