2012年11月26日月曜日

スコッチ・ウイスキーに新たな問題――モルト・大麦の輸入を巡る対立が表面化(スコッツマン)

 スコッチ・ウイスキーの原材料であるモルトを巡って、モルト製造業者と大麦生産者が対立している。

Malt shortfall claim angers NFUS chief(スコッツマン)
http://www.scotsman.com/business/food-drink-and-agriculture/malt-shortfall-claim-angers-nfus-chief-1-2654181

 ウイスキー蒸留所やビール醸造にモルトを供給するクリスプモルティンググループ(英イングランド)のボブ・キング・コマーシャルディレクターは、年内にもモルトをスコットランド域外から調達したいという意向を示す。世界的なウイスキー需要が高まりから、スコットランドで生産される大麦のみでは供給が間に合わないというのが、その根拠だ。

 キング・ディレクターは先週、スコットランドのオールメルドラムやパースにて開いた大規模農業経営者向けセミナーで「スコッチ・ウイスキーはスコットランドでつくられなければならない。しかしモルトは、どこでもつくることができる」と理解を求めた。

 一方、これに反発するのはスコットランド農業組合のジョン・ピッケン副代表だ。ピッケン副代表は組合内に設置される合同生産高評議会の議長を兼ねており、スコットランドの大麦生産高は需要に対応できている、と主張する。そして、キング・ディレクターの発言は、スコットランドの大麦生産者を脅迫するものだ、とも批判している。

「適正な価格とサプライチェーンが整えられれば、生産者は需要に対応する」

 クリスプが輸入に傾くスタンスを、スコットランド農家への値下げ圧力だと示唆する。

 この反論を聞いたキング・ディレクターは「誤解である」と、次のようにコメントした。
「私が大麦を輸入したいわけではない。(現状で)モルティングされる大麦は、全てスコットランド域内から調達している。しかし我々の顧客は、スコットランドで賄えなくなればモルトを輸入しようとするだろう」

 モルト製造業者、蒸留業者は今後10万トンのモルトが不足すると見ている。「蒸留業者はスコットランドの生産者がつくったモルトを欲しがる。理由なく、費用のかかるイングランド産、大陸産のものを手に入れようとするだろうか? (キング・ディレクター)」と、あくまで需要増に対する措置である点を強調する。

 スコットランドでこれ以上、大麦の作付面積増加が困難なことも、原因のひとつだ。農家はエタノール向け植物や小麦など、より収益性の高い農産物の作付面積増加を求める。元記事のスコッツマンでは、これ以上の大麦畑の減反をなくすこと、そのために生産高を増加させる新種を農家が採用できる状況になることが、解決への希望の光だとしている。

 一見、好況に感じるスコットランドの酒造業界。しかし、空前のウイスキー需要の高まりは、その影で新たな問題が露見している。

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