2012年6月6日水曜日

グランツ社ステラ・デイビッドCEOインタビュー②(アイリッシュタイムズ)

きのうからのつづき)

ワールドスピリッツジャーナルの記事を書いていて日々思うのが、世界の酒造各社のリーダーたちは、ユニークな経歴を持っている者が多いということだ。
たとえば、ビーム(米)のマシュー・シャトックCEOはダラム大学(英)で学んだ後、英国陸軍戦車部隊の指揮官をしていた。
また、キリンビールの磯崎功典社長は(同社グループ企業ではあるが)ホテルの支配人を務めた経験を持つ。

その点、ステラ・デイビッド グランツ社CEOの経歴も興味深い。
彼女はイングランド・ノースヨークシャー州に生まれ、ケンブリッジ大学で工学を修める。
航空機メーカー、ブリティッシュ・エアロスペース(BAe、英)の支援の下で、だ。
やはり大学では「飛行機の設計をしていた」というが、しかし、卒業後に入社したのはBAeではなく音楽事業を展開するソーンEMI(英)だった。
ここで彼女は、マーケターとしての人生をスタートさせる。
「エンジニアになるよりマーケターとなって、良かったと思っている」
ソーンEMIだけでなく、「スナックフーズの会社」、そしてバカルディ(英領バミューダ諸島)で、いずれもマーケティングに携わる。
なかでもバカルディには15年、在籍した。
「バカルディでのキャリアは、英国担当のマーケティング・コントローラーという立場からスタートした。その後、マーケティング・ディレクター、取締役(英国担当マネージング・ディレクター)、会社の最高マーケティング責任者になった」
バカルディでの思い出は、プレミックスカクテル「バカルディ・ブリーザー」の、英国での成功だという。
「バカルディ・ブリーザーは然るべきときに、然るべくしてつくられた商品だった。英国で爆発的に売れたのは、見た目もそうだけれど味も良い商品だったからだ」
デイビッドCEOがそう言うと、インタビュアーのキャラハン・ハンコック記者はいじわるな質問をした。
「今でも、バカルディ製品を飲むのですか?」と。
しかし、デイビッドCEOは今の会社への思いを言葉に表す。
「正直に話したところで、私が好きなのはヘンドリクス。私はあなたが注目しているブランドに忠実なの」

彼女は2009年8月、そのヘンドリクス・ジンを保有する、グランツ社の門をくぐる。
バカルディでの実績を評価され、CEOとして迎え入れられたのだ。
「グランツ社は身の丈を知っている会社。小さい会社ではないけれど、大きくもない。大切なのは、自分の強さが何であるかを知っているか、ということ」
グランツ社は今年で創立125周年を迎える。
だが、社内向けのものを除いて特にイベントなどを行なわない。
また会社はウィリアム・グラントの子孫たちによって保有されるが、創業家のメンバーはオペレーションを行なう立場にはないという。

ハンコック記者は彼女を「種々の可能性については、慎重に話す」と評する。
タラモアデュー(元記事はアイルランド紙)の今後について、「つまるところ、どのくらい大きなブランドになるかなんて話すことができない。それをするのは愚かなこと。でも、今日よりは確実に大きくなっているだろう」と語った後、こう付け加えた。
「大切なのは、(タラモアデューの)名前で選んでもらうこと、棚から商品を手に取ってもらうこと——消費者との間にその関係を築いていくことだ」

Whiskey galore for Tullamore(アイリッシュタイムズ)


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